るるどの覚書

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2006/03/01

心のひだ

『灰色の午後』 佐多稲子(著者)

こんなにも感動する小説に出会ったのは、何十年ぶりだろう。
こんな感動は、もしかすると生まれてはじめてかもしれない。
海外での生活が長かったこともあり、日本の文学や文章にふれる機会があまりなかった。悲しくも、私の文章力にそれは反映してしまっている。

それはさておいて、『灰色の午後』は私小説であるという。私小説というジャンルは日本独自なものだと聞いたことがある。アジア学の学会で、英語では適切な言葉がなく、「シショウセツ」という言葉が英語の会議の中で飛び交っていたことを思い出す。

「心のひだ」という日本の言葉を知ったときには、素敵な表現があるんだなと感心したが、少しぴんとこなかった。『灰色の午後』を読んで、はじめて「心のひだ」を表現するとどんなものであるかが感覚的にわかった。私小説は「心のひだ」を表現する最高の方法なのかもしれない。

あれほど内的感覚を鋭く表現した作品に、これまで出会ったことがなかった。
痛々しい部分が多く、読んでいる私まで「そこまで自分と向き合わなくてもいいから」と声をかけ、白紙にしてしまいたくなるほど生々しい。どうしたらあそこまで表現できるのか、本当に不思議である。

最近、自分の大切な時間を割いてまで、小説を読みたいと思わなかった。けれど、これからはいろんなものを読んでいきたい。生きていて本当に良かった。死んでいたら佐多稲子氏の作品に出会うことが出来なかったのだから。

佐多稲子氏の作品を通して、彼女も私も同じ日本人の女性であると意識し、感慨に浸る。物語には著者の魂が宿っている。読んでいる間、二人の鼓動は重なる。彼女の目線で社会を垣間見、同じ場面で吐息をもらす。

感覚の合う本に出会うたびに、孤独感が少しずつ薄まっていくような気がする。

以下、全部読み終えた後の感想。

中心となる女性が3人登場する話。
折江(佐多稲子)
和歌(田村俊子)
数子(宮本百合子)

女性は本当に怖いと思った。折江のしたたかさには、どんな状況に置かれても自分を守る強さを感じた。まだ、読後、間もないので、感じたことが言葉にならないほど、生々しく心に重くのしかかってくるものがある。

和歌は折江の旦那と不倫していた。その間の折江の苦しみは、精神状態も危ぶまれたのではないだろうかと思うほどだった。しかし、最後には、折江は旦那を自分の元へまた引き戻す。そうすることで、結果的に自分をも裏切ってしまった。

和歌はふらふらしていて、寂しさのあまり男と一緒になる、誰にも埋められない孤独を持っている女性であるような気がした。結局、折江の旦那は折江のもとへ戻り、一人になった和歌。中国へ行き、二度と日本に戻ることなくこの世を去った。和歌の永遠の孤独がとても重く感じる。

孤独や寂しさが、裏切りにつながる行為を生み出し、裏切りが裏切りの連鎖を生む。人間が過ちを生み出す流れを垣間見たような気がする。

男は卑怯だ、というか、弱い。一人では生きれない、孤独に耐えることのできない動物であるようだ。

折江が、連れ合いに和歌との関係を問うた時、「何を云われようと、知らないことは知らないんだから。僕はそう云うしかないですよ」としらを切る折江の連れ合い。

本当に卑怯だ。

卑怯な男は、女の生き方を醜くさせる。「女性に美しく生きてほしいなら、男よ、もっと正々堂々と体を張って生きろ!卑怯なことはするな!」と言いたい。

女の友情を引き裂いたのは、折江のだんなの弱さでもある。結局、最後は女が犠牲になる。女である私はどうしても同性の見方になってしまう。男女の肉の弱さは、同じ人間としてとがめがたいが。
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